土曜日, 2月 03, 0019

拳銃紹介(小野塚小町編)

小町の拳銃-ベレッタM92F
ベレッタM92は、イタリアのピエトロ・ベレッタ社が生産・販売している、9mm口径の半自動拳銃。
概要:
世界中の警察や軍隊で幅広く使われており、現在はコルト・ガバメントに代わり米軍制式拳銃ともなっている、なお、米軍では「M9」のモデル名で呼ばれている。

正式名称はピエトロ・ベレッタM92。より詳細には、M92S・M92SB・M92SB-F(M92F)・M92FS など複数のモデルが存在する。米軍のM9は採用当初はM92SB-Fであったが、今はM92FSに切り替わっている。

ワルサーP38の流れを汲むプロップアップ式ショートリコイル機構を持ち、複列弾倉(ダブルカラムマガジン)に15発の9mmルガー(パラベラム)弾を装填できる。

同社の拳銃の特徴である遊底(スライド)の上面を大きく切り取ったデザインは、イタリアの銃器デザインのひとつの到達点とも呼ばれ、見た目の美しさから映画やTVドラマなどでも主人公などの使う拳銃として、よく登場する。

歴史:
ベレッタM92は、ベレッタM1951の後継機として1970年に開発がスタートした。

当時の西側は政治テロが頻発しており、市場のニーズが多弾装・ダブルアクションにあると睨んだベレッタ社は、資本提携を結んでいたベルギーのFN社からダブルカラムマガジンのノウハウを学び、1975年に9mmパラベラムで装弾数15発、ダブルアクションのベレッタM92を発表した。

メカニズム的には前作のM1951で採用したワルサーP38のプロップアップ式ショートリコイルメカニズムを受け継いでいるが、これは特徴的なスライド形状により他の方式を取れなかったという面もある。しかしその上面を切り取った特徴的なスライドは、軽量化によりブローバックの際の衝撃を和らげ、エジェクションポートの拡大によりジャミングを防ぐ効果もあった。この形状により耐久性が無さそうに見えるが、適切な熱処理を施すことで十分な強度を持たせることが出来る。

またベレッタM92は、1978年から始まり長期に渡る米軍制式採用トライアルをくぐり抜け、1985年にシグ・ザウエルP226を破って(納入価格が安かったことが決め手と言われている)米軍制式採用の座を射止めることとなる(制式採用名は「M9ピストル」)。これにより一気に人気が高くなり、各国の軍や警察組織、民間市場でも一躍人気銃となる。またこのトライアルの際に出された改善要求を逐一クリアしたことによって、ベレッタM92はより優れた拳銃へと進化したと言われている。

しかし、スライドの構造から耐久性が不足し、射撃訓練中にスライド後部がちぎれ、それが射手を直撃するという事故が発生するなど(後にハンマーブロックの改良により直撃だけは避けられるようになった)の不良がおきたため米軍の一部の部隊ではM1911A1やSIG P226/228が好んで使用されているところもある。

現在でもベレッタM92は自動拳銃のスタンダードとされており、コピー品が多数存在する。しかし、1990年代に開発された最近のポリマーフレームのピストルと比べると、多少劣る点が出てきたのも事実である。また、スタンダードとなったが故に、ベレッタ社は新型の自動拳銃のデザインをM92系の流れを汲むものにしないと「ベレッタらしくない」と不評を買いがちになるという問題も発生している。

なお、ベレッタ社自体もポリマーフレームの新機種として「PX4 storm」、直系の後継となる「90-Two」を発売している。PX4はM92系とは違ったデザインや動作機構を持つため、やはり「ベレッタらしくない」としてベレッタファンからは不評であるものの、それ以外のユーザーからは好評のようである。

トライアル:
次期米軍制式採用拳銃のトライアルで、NATO標準の9mmパラベラム拳銃が必要になったアメリカ軍が、往年の名銃コルト・ガバメントに変わる十分な性能を秘めた銃を選抜するために行った試験。これに合格するということは「米軍のお墨付きがもらえる」ということであり、商業的価値も大きいと思われる。実際にベレッタM92は米軍に321,260丁もの数を納入し、その後フランスで110,000丁ものライセンス契約も結んでいる。この他にも警察関係での採用も多い。

<1978~1980年のトライアル>
このトライアルはアメリカ空軍限定のものであり、アメリカ全軍のトライアルではなかった。しかし、時期的に軍首脳部の注目が集まったのは言うまでもない。このトライアルでは、参加各社から提出された8モデルのうちベレッタM92が最も優秀であるとの結論が1980年に下された。しかし、このトライアルはアメリカ全軍へのトライアルとして拡大されることになり、先の決定は白紙に戻ってしまう。

<1981年のトライアル>
このトライアルでは新たに軍が要求するスペックが提示され、その難易度の高さに参加を取りやめるメーカーも少なからず存在した。結局期日までに提出できたのは2社(ベレッタ社・S&W社)のみであり、期日は延期されることとなる。

二回目の期日では4社が提出し、SIG社からは最後までベレッタM92と争うことになるP226が提出された。しかし、このトライアルの結果は「先の要求を満たすものは存在しない」というものであった。

<1984~1985年のトライアル>
1984年に再開されたトライアルにはベレッタM92とSIG P226を含む7モデルが提出され、最終的にベレッタM92とSIG P226の一騎打ちとなったが、裁定は再びベレッタM92に下った。このトライアルをもって今回の米軍制式採用ピストルは決定し、ベレッタM92はその栄誉を受けることとなる。

なお、このトライアルにおいてテストが不公平であるとした数社が裁判を起こしたが、いずれも公平なテストであったとの裁定が下っている。しかし、自国外の銃器メーカーに対する風当たりは強く、ベレッタM92より割高であるが性能・操作性で勝っていたとされるSIG P226が敗退したこともあって「ベレッタM92は政治的理由によって勝ち残ったに過ぎない(SIG社のあるスイスはNATO加盟国ではなく、ベレッタ社のあるイタリアには基地を作る計画が進行していた)」とする説も根強く残っている。

なお、基本的にベレッタM92もSIG P226も米軍の要求をパスしており、「より良いものがあるならばそちらを採る」のか、「要求は満たしているのだから安いほうを採る」のかは甲乙のつけられない選択肢であるといえる。

スライド破損事故:
1987年9月と1988年1月・2月に一件ずつ、合計3件発生した「スライドが破損して破損部分が射手の顔面に当たる」という事故である。事故の被害者がいずれも海軍特殊戦クループ(特殊部隊)のメンバーであったため、ベレッタ支持者からは「強装弾(通常より火薬量を増やした弾)の使用など、わざと過酷な条件下において壊した」とする説や、不支持者からの「もとから欠陥があった」とする説の応酬が繰り広げられた。事件を重く見た米軍は調査を進め、

・使用弾はNATO標準弾であったこと
・何らかの理由でスライドの製造過程において強度が足りないまま出荷されてしまったこと

を発表した。

なお、米軍に納入するベレッタM92は全てベレッタUSAで生産したものとされていたが、品不足のためイタリアから納入されたものもあった。今回の事故で破損したのは、いずれもイタリア製のスライドであったことが後に発覚した。

ベレッタ社はこれに対し、破損箇所に適切な熱処理を確実に加えることによって対応した。これによりスライドの破損事故は以降発生していない。

第四のトライアル:
1988年、先のトライアルを再度実施するとした名目のトライアルが行われた。しかし、既に性能的に合格しているベレッタとSIGは提出を拒否し、結局先のトライアルで敗退したS&Wと前回の提出に間に合わなかったスタームルガーが参加した。ベレッタM92に関しては既に米軍内にあったため、これを無作為に抽出してテストを行った。その結果、ベレッタM92はまたしても最優秀とされ、S&Wのモデルはトラブルを起こして敗退、スタームルガーは性能的には合格したが、今更変えるほどの価値は無いと判断された。これにより、ベレッタUSAは57,000丁の追加受注を受けた。なお、これにより「標準スライドが10万発の使用に耐える」という決定的な評価を与えられたが、敗退した各社や不支持者のネガティブキャンペーンによって、未だにスライドに不安があるという噂を完全に払拭しきれていないと言われている。

M92のバリエーション:
<M92FS/M92FS Inox>
M92、M92S、M92SB(M92S1)、M92SB-F(M92F)と続いたベレッタM92の最新の型である。万が一先のような事故が起こったとしても、破損したスライドが射手に当たらないようにハンマーピンを大型化し対策したモデルで、現在はM9もFS型に切り替わっている。

なお、Inoxとはステンレスシルバーモデルのこと。

<M92FS Vertec/M92FS Vertec Inox>
M92FSの特殊部隊・法執行官モデル。主な変更点は以下の通り。

・グリップ後部のふくらみが無くなり、持ちやすくなった。
・M92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、全長の短縮が行われた。
・フレーム前方下部にマウントレールが設置され、ライト等のオプションが装備できるようになった。

<M92G Elite II>
M92FSをより使いやすいように改良を施したモデル。主な変更点は以下の通り。

・後述のブリガディアスライド(ステンレス)を装備している。
・M92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、ステンレス製となった。
・グリップ上部を窪ませ、グリップしやすい形状になった。
・ロックタイムの短縮を狙ったスケルトンハンマーの使用。
・ノバックサイトの採用。
・マガジン底にマグバンパーを追加。

<M92DS/M92D>
M92のダブルアクションオンリーモデルで、ハンマーが無くなっている。また、M92Dにはスライド後部のセイフティが無い。

<M92 Compact L>
M92のコンパクトモデルで、装弾数10+1発。このモデルもM92でスライドから出ていたバレル先端が切り取られ、全長の短縮が行われている。

<M92FS Brigadier/M92FS Brigadier Inox>
後述のブリガディアスライドを装備した、強装弾対応モデル。

<ライセンス生産>
M92のライセンス生産品。

・Helwan model 92(エジプト)
・PA-MAS(フランス)
・Taurus PT92(ブラジル)
・Vector Z88(南アフリカ)

M96FS:
ベレッタM92の.40S&W弾使用モデルで、装弾数11+1発。基本的なサイズはM92FSと変わってないが、弾の口径が大きくなったぶん装弾数は減っている。また、エジェクションポート大型化に従い、チャンバーとスライドの肉厚が薄くなっている。 M96にもM92と同じバリエーションが存在するが、M96コンパクトだけは無い。

ブリガディア(ブリガデール)スライド:
M92は、そのスライドのデザイン上、ロッキングブロック周辺の強度が一番低い。これは、強装弾を使用した場合問題になってくる。そのため強装弾に対応したモデルは、ロッキングブロック付近が盛り上がったデザインになった「ブリガディア(ブリガデール)スライド」を採用している。

登場作品:
米軍制式拳銃であり、法執行機関でも制式採用しているところが多いことから、現代の戦争や警察を題材としたジャンルでは最もよく登場する拳銃のひとつとなっている。また、M92はサム・セーフティと呼ばれるマニュアルの安全装置が左右両側についているが、これが左利きの人には使いやすいといわれており、ダイ・ハードシリーズのジョン・マクレーンのように左利きの人が多く使用しているのも特徴である。
(参考:Wikipedia)

0 件のコメント: