デザートイーグル(英:Desert Eagle)は、アメリカ合衆国ミネソタ州のミネアポリスにあるM.R.Iリミテッド社が発案し、イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ社(IMI・イスラエル国立兵器廠)とマグナムリサーチ社が生産する自動式拳銃。現在、小火器部門はIMI社から半独立しイスラエル・ウェポン・インダストリーズ社(IWI)に社名を変更している。
.357マグナム版、.41マグナム版、.41Action-Express(.41アクションエクスプレス)版、.440Cor-Bon(.440コーボン)版、.44マグナム版、.50Action-Express版が存在し、.50AE版は自動式拳銃としては世界最高の威力を持つ拳銃として知られる。
歴史
1979年の開発と共に発売され話題となった.357マグナム版だったが、それでも5-6回に1回程度のジャム(排莢不良・次弾装填障害)が発生し、一般大衆の人気を獲得するには至らなかった。その後、作動の安定化と.44マグナム版の発売とともに人気が上昇し、.50AE版でその地位は不動のものとなった。
.50AE版は発売当時世界最強の威力を誇ったが、現在はS&W M500にその地位を奪われている。しかし自動式拳銃に限って言えば、最強の地位は未だにデザートイーグルのものである。
その特徴的な機構と大きさ、銃に対するイメージから、ゲームや映画にもよく登場する。
特徴
50AE版の口径は表記上は50口径となっているが、実際には使用弾薬である50AE弾の弾丸径は0.5インチではなく0.54インチである。S&W M500の使用弾薬の弾丸径は0.492インチであるため、600NEを使用するPfeifer Zeliskaを除けば拳銃弾の中では最大の口径である。 威力の面でも自動拳銃の中では最大であり、レベルⅡ規格のボディーアーマーを貫通する。さらに、発射された弾丸の運動エネルギーはAK47等に使用されている7.62×39弾のそれと同等であり、拳銃弾としては考えられないほどの威力を秘めている。また、レベルⅢ、Ⅳ規格のボディーアーマーでも、貫通は防げても着弾の衝撃を十分には吸収できないため、負傷は免れないとされている。このように、高レベルのボディーアーマーを装着している相手にも比較的有効であることから、実用性がないとされながらも、一部の兵士に使用されている。 また、銃身上部(ブローバックしない部分)にレイルを装備しており、ドットサイト、レーザーモジュール等が装備可能である。
外観
全長269mm、全高149mm、重量2053g(.50AE版)という巨体のデザートイーグルには、通常の6インチモデルの他に10インチ、14インチのロングバレルモデルも存在する。これらの中で、6インチモデルと10インチモデルは現在も市販されているが、14インチモデルは1999年に生産が中止された。
また全長の長い弾を使用することもあってグリップは前後に長く、シングルカラムマガジンにも関わらず握りやすいとは言えないが、マグナムオートの一種でありカービン弾を使用するオートマグIIIなどと比べれば、まだ握りやすい。バレルは固定されており、ガス圧により作動するボルト、スライド部の重量は見た目より少なく軽い。
しかし、操作性に関しては特筆すべき難点もなく、スポーツモデルとして射撃手のことをよく考えた設計であると言える。
虚構と現実
この巨体と重量のため、よく「小柄な人、女性や子供が撃つと肩の骨が外れる」などという言説を見かけるが、これはフィクションの影響によるデマである。射撃時の反動は確かに大きいが、同じ弾薬を使用する回転式拳銃(リボルバー)に比べれば扱いやすい。現実には射撃姿勢や扱い方に注意を払えば、一般的な体格の人間ならデザートイーグルを撃つことは可能である。
これは射撃時の反動が銃自体の重さである程度吸収されることと、ボルト、スライド部が後退する動作により反動の伝わり方がリボルバーよりも間接的になるためである。これにより、正しい射撃姿勢をとれば片手での射撃も可能である。(但し、50AE仕様は、その反動がすさまじいのは事実である。射撃姿勢を教授された大人の女性ならまだしも、少なくとも子供が射撃すると、手首を傷めるほどの反動があるので注意が必要)
またスライドロックリリース(スライド固定式安全装置)を片手で操作するのは手が大きな者でも難しい。
.50AEや.44マグナムの威力は誇張して描かれることが多く、実際には車のエンジンなどの厚い鋼鉄製の物体は撃ち抜けない(ブローニングM2重機関銃で使われる12,7mm×99弾ほどの威力がないと撃ち抜く事は不可能である)。
「ダーティハリー」の作中でキャラハン刑事がS&W M29(.44マグナム)を使い車を止めたシーンも、弾は運転手に向けて発射されている。また日本の警察が.38スペシャルで自動車を停止させたこともあるが、これは比較的脆弱なラジエーターを打ち抜いたことによるものである。
機構
当初マグナムリサーチ社はガス・オペレーテッド式での運用を考えていたが、これは上手くいかなかった。その後IMI社が独自の機構を考案し、その作動原理は最新版のデザートイーグルでも変わっていない。
IMI社が考案したガス・オペレーテッド・リピーティング・システムは軍用ライフルとよく似ており、高圧のガスを上手く利用できる設計となっている。この方式によりバレルは固定され、それによって優れた命中精度を持つこととなった。スコープ等を載せる溝もバレルに掘られており、スポーツモデルとしての片鱗も見せる。
当初の.357マグナムで見られた作動不良は.357マグナムのガス圧が低かったことが原因と言われているが、現在ではガスポートの改良により改善されている。
.357マグナムモデルでは通常のライフリングをもつバレルを装備していたが、.44モデルからは“ポリゴナル・プロフィール”と呼ばれる、内部が円に近い六角形で通常のライフリングのように捻られているバレルを使用している。なお、現在は.357マグナムモデルもポリゴナル・プロフィール・ライフリングを使用している。
用途
デザートイーグルは当初軍用・警察用拳銃として開発され、イスラエル軍や警察に支給されたが制式採用には至らなかった(イスラエル軍・警察はM92Fなどを制式採用としている)。 近年ではこの種の超大型拳銃を使用した「メタリック・シルエット」などの射撃競技も隆盛を見せ、拳銃による狩猟が認められているアメリカの一部地方では狩猟用としても使用されている。 ただし、特殊な拳銃のため非常に高価である(1249$- 日本円に換算して約13万円- )。
(参考:Wikipedia)